高血圧は自覚症状がほとんどないため、健康診断で血圧が高いと言われたり、ふと測った血圧が高くて驚いた、という経験はありませんか。
また、両親が高血圧で病気になったり、年齢とともに健康が気になってきた方もいるでしょう。
この記事では、高血圧とは何か、高血圧だと何が良くないのか、そして予防するには何をすればいいのかを、わかりやすく解説していきます。
一緒に学びながら、今日からできる対策を考えていきましょう。
高血圧とは何か?
血圧って何?
血圧とは、心臓から送り出された血液が動脈の壁を押す力のこと。
血圧を測るときによく出てくるのが「120/80mmHg」といった数値です。
このうち先に表示されるのが「上の血圧(収縮期血圧)」、心臓が血液を送り出した直後の圧力を表します。
後に表示されるのが「下の血圧(拡張期血圧)」で、心臓が拡張して次の拍動に備えている間の血圧です。
単位のmmHg(ミリメートル水銀柱)は、圧力の強さを表す単位で、気圧の表現などにも使われます。
会話では「120の80」と略すだけで十分伝わりますので、医師や知人と話す際に単位を省略しても問題ありません。
高血圧はどうやって判断する?
日本高血圧学会では、診察室で測定した血圧が140/90mmHg以上、または自宅で135/85mmHg以上の場合を高血圧と定義しています。
上の血圧は正常でも、下の血圧だけが高いケースもあります。これは細い血管の動脈硬化が進行しているサインかもしれません。
まだ太い血管の柔軟性は保たれていても、細い血管が硬くなっていると、拡張期血圧(下の血圧)が先に上昇することがあります。
こうした状態は高血圧の初期に見られることがあり、早めの対策が大切です。
高血圧の種類
本態性高血圧症
原因がはっきりしない高血圧を「本態性高血圧症」と呼びます。
遺伝的な体質や生活習慣が影響していると考えられており、以下のような要因があります:
– 過剰な塩分摂取
– 肥満(特に内臓脂肪型肥満)
– 飲酒のしすぎ
– 精神的ストレス
– 自律神経の乱れ
– 野菜や果物の不足(カリウム不足)
– 喫煙
– 運動不足
高血圧の約90%はこのタイプとされており、生活習慣の改善が予防・進行抑制に有効です。
二次性高血圧症
明確な病気が原因となる高血圧は「二次性高血圧症」と呼ばれます。
代表的な疾患には以下があります:
– 腎動脈狭窄
– 原発性アルドステロン症
– 褐色細胞腫
これらが疑われる場合は、専門医への相談が必要です。
血圧はどこで測定したらいいの?
血圧測定は主に2つの方法があります:
1. 医療機関や健診での測定
2. 自宅やドラッグストアでのセルフ測定
ここでは日常的に使いやすい「自宅での正確な測定法」を紹介します。
自宅で正確に測るポイント
血圧は1日の中でも変動します。以下のような要因で上下します:
– 運動や入浴の直後
– 排泄や食後のタイミング
– 睡眠の前後、体調不良時
– ストレスや緊張
– 季節(冬は上がりやすい)
測定ポイントは以下の通り:
– 毎日、同じ時間に測定する
– 同じ腕で測定する(通常は利き腕の反対側)
– 同じ体勢で、腕を心臓と同じ高さに
– 測定前は5〜10分間、安静にする
高血圧が原因でかかる病気とは?
高血圧は初期症状がほとんどないため、サイレントキラーと呼ばれています。
進行すると次のような病気のリスクが高まります。
脳の病気
– 脳出血
– 脳梗塞
– 一過性脳虚血発作(TIA)
– 血管性認知症
心臓の病気
– 心肥大
– 心不全
– 虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞)
– 心房細動
腎臓の病気
– 腎硬化症
– 慢性腎臓病(CKD)
– 末期腎不全(ESKD)
血管・大血管の病気
– 大動脈瘤
– 大動脈解離
– 閉塞性動脈硬化症(PAD)
血圧が120/80mmHgを超えると、これらのリスクが段階的に上昇するとされています。
高血圧に関連する脳・心・血管病による死亡は年間約10万人に上り、がんに次ぐ死因リスクとも言われています。
高血圧を予防する5つの生活習慣
日本高血圧学会では、生活習慣の見直しによる高血圧予防が推奨されています。特に効果的な5つのポイントを紹介します。
塩分の摂取を控える
塩分の摂りすぎは体内に水分を溜め込み、血圧を上げます。1日6g未満が推奨されていますが、これは意識しないと達成が難しい数値です。出汁や香辛料などを活用することで、美味しさを保ちながら減塩を進めることができます。
肥満を解消する(特に内臓脂肪型)
内臓脂肪は血圧を上げるホルモンの分泌や血管の硬化に関係しています。体重を1kg減らすだけでも血圧が約1mmHg下がるとされており、無理のない減量が高血圧予防の第一歩になります。
適度な運動を習慣にする
ウォーキングなどの有酸素運動は、上の血圧を4〜9mmHg下げる効果があるとされています。週150分程度の中強度の運動が推奨されています。
飲酒はほどほどに
飲酒は血圧を上げる要因の一つです。男性は1日1合、女性は0.5合を目安に、飲みすぎには注意しましょう。
野菜や果物を意識して摂る
カリウムはナトリウム(塩分)を体外に排出する働きがあり、血圧の安定に役立ちます。DASH食のように、野菜や果物を意識して取り入れる食事が推奨されています。ただし、腎臓病のある方や糖尿病の方は摂取に注意が必要です。
その他に意識しておきたいこと
– タバコを控える
– 飽和脂肪酸の摂取を減らす(脂質の質を見直す)
– 睡眠をしっかりとる、ストレスを溜めない
– 寒暖差、便秘なども間接的に影響することがある
まとめ
高血圧は自覚しにくく、気づかないうちに体へ負担をかけている可能性があります。
予防や改善に役立つ生活習慣は、他の生活習慣病の予防にもつながります。
まずはひとつ、小さな習慣から始めてみましょう。
たとえば、塩分を意識して食事を見直す、毎朝血圧を測る習慣をつける――それだけでも、立派な第一歩です。